2022年を迎えました。年頭のご挨拶に代えて

2022年1月7日お知らせ

『2022年をひとりで迎えたことについて』

 2021年12月31日、大晦日。ご利用のお客さまもアルバイトスタッフも23時にはお店を後にしました。この日のスタッフはたいまでした。最後までお店を利用していたお客さまもたいまの友人らで、「これから友人宅で年越しをする」と聞いていました。23時の閉店と同時に皆、帰りました。わたくしはひとり厨房の掃除をしながら、静かな年越しになる事への胸の高まりを感じワクワクしました。

 思い起こすと、ひとりで年越しをしたのは大学一回生時以来ではないでしょうか。レポートをまとめながら下宿先で年越しをした2000年大晦日以来、実に21年ぶりの様な気がします。それ以降は彼女や同級生や友人、お客さまらと年越しをするかなどしていたように思います。イルピアットを作ってからは自宅に友人らを招いて年越しをしていた期間も数年ありました。10人前後が集まり、くだらない話を繰り返して泥酔する年越しは楽しくて、楽しくて、仕方がなかったなあ。

この新年はNHK-FMラジオを聴きながら迎えました。何の盛り上がりもない年越し。ラジオのパーソナリティーたちだけがはしゃいでいた年越し。わたくしはいつものように厨房の掃除をしていました。静かな年越し。これがいい。こだわり。これが格好いい。年が明けたことを確認するとラジオを消しました。いつもならテーブルに座りダラダラとネットサーフィンなどするけど、今日は違う。店内に残っていると初詣に出た知人やお客さんが店内を覗くと思い、そそくさと片付けて二階に上がりました。

0;15頃には店を出たかなと思います。誰にも会いたくありませんでした。この貴重で特別な年越しを独り占めしたかった。まるで自分を抱くような感覚です。二階に上がると、あっという間に寝る準備を整え、さっさと寝ました。しんみりと年越しに浸ることもしません。新年を静かに迎えられて、しみじみ良かった気持ちだけで充分なのでした。布団に入ると、元日のランチメニューやメニュー替えの段取りばかりが頭を巡ります。いつもと変わらない就寝でした。

『自分の価値観を反芻させて悦に浸る癖について』

私が年末年始を営業するようになったのは2019年の大晦日からです。居合わせたお客さまと年越しの祝杯をあげました。賑やかでした。世界は明るかった。しかしこの時既に、中国では新型コロナウィルスが確認されていました。祝杯を交わしながら、新しいウィルスとその脅威についてなど、微塵も考えられなかった。この先に世界がコロナ禍に翻弄される事など夢にも思わない2020年1月1日。私は毎年こうして新年を迎えるものだと思っていました。

この2022年をひとりで迎えられたことは、どこか、集中力を取り戻せたような気分でした。その甲斐あってか、営業を続けながらメニュー替えも果たせました。業者の連休や市場の休場などもあり、材料に大きな変化は作れなくて残念でした。それでも、計画通りにできたものと思います。1回生の時、帰省せずにレポートを書き上げることが「格好いい」と考えていたミズタニ青年は、21年を経てもその感覚のままです。相変わらず、自分の価値観を反芻させて悦に浸る癖がやめられない。

年越しに友人らと過ごした時間は(先にも言いましたが)、楽しかったです。人と過ごすことが嫌いなわけではないのです。ただ人が集まると、自分のポジションをどう設定してよいのか分からなくなる。紙屋川では「コックさん」としてのポジションがあるので困りません。わたくしはいつも自分の役割を考え過ぎてしまうので、人と会う機会をためらいます。傍からは、私が(まったく)その様に見えていないようですが。わたくしは自分の役割ばかりを考えて過ごしています。

 『2022年を迎えて』

 さて。2022年を迎えました。1月7日金曜日現在、新型コロナウィルス感染者は1日4475人をたたき出しています。12月21日発表分が152人でしたから感染者数のテンションは上がりっぱなしです。沖縄、山口、広島にはまん延防止の制限が9日から発出されます。米軍基地を起点に、オミクロン株の感染拡大を防げなかったことで市中感染を招いたと指摘されています。政府は飲食店に対し「利用客への感染予防対策の徹底」を第三者認証店システムの活用を通して言うのに、米軍には言えなかった。優位性によるロジックであったことを露呈する恥ずかしい結果となりました。

 第三者認証店に優位性を持たせることは感染防止対策を拡充させ、有効にするためにも必要だったと思います。しかし、いくらお店が感染予防対策を施しても限界がある事を米兵たちは証明しました。見事なまでに。基本的な感染予防対策をアメリカ本土でもおろそかにする傾向はあり、その証明としてインフルエンザの流行が指摘されています。日本は基本的な感染予防対策がされている事でインフルエンザは流行していません。日米に見られる感染予防意識の差異について、民間人のわたくしでも知っているのですから政府が知らない訳はありません。事実、「放っておいた」事で防衛線は総崩れになりました。

 年末年始を休まず営業してきました。明日の営業でフィナーレです。12月28日火曜日から休まず営業をしてきました。この期間中、世間は年越しも、感染者の増加もありました。働いているという同一線上に見る変化としては非常に変化があり、山あり谷あり、ひとつの映画を観ているような気分でした。変化は望む・望まないに関わらず訪れます。導き出される結果が悲惨で悲しい場合「面白い」ことにはならないのですが、社会や人々が訪れる変化に右往左往する様はどこか面白くはあります。わたくしは年末年始を休まず営業できて満足です。

 2月の休業を断念して迎えた年末年始。しかし非常に充実しました。感染拡大に伴い、行政からの要請には注力しています。結果的に、要請に従い営業内容を変更する事も考えられます。その時はご不便をおかけしますが、何卒ご理解ください。私の仕事は行政や政府の要請を無視して快適にはできない状況にあります。不自由な日々が続きます。その渦中にあって、見られる変化を笑い飛ばせる自分でいたく思います。不謹慎と言われようとも、わたくしは現状をきちんと受け入れて進みたいと思います。

本年もどうぞよろしくお付き合いください。
イルピアット紙屋川 ミズタニ トニー